マチュピチュまでの登山道「インカ道」を歩くために
2017年12月8~11日まで3泊4日でインカ道を歩いてきました。その体験をもとに、インカ道を歩くために必要なことや注意点などをまとめました。
もくじ
インカ道(インカトレック)とは
インカ道とは、インカ帝国の時代にクスコを中心に南米6ヶ国にわたって張り巡らされた道路網のことで、約3万キロメートルにも及びます。
このインカ道の一部43Kmを3泊4日かけてマチュピチュまで歩くのがインカトレイルまたはインカトレックです。
現在マチュピチュがあるアグアス・カリエンテス村へ行くには車が通る道がないので、電車に乗るかこのインカ道を歩くしか方法がありません。
途中にはインカの遺跡がいくつかあり、それらを見学しながらマチュピチュに向かいます。
インカ道は環境保護のため、1日の立ち入り人数が500人に制限されています。これにはポーターやガイドも含まれているので、実際のハイカーは1日200人ほどになります。また、立ち入りにはガイドが必須なので、ツアーに参加するか、専属ガイドを雇うことになります。
コース
いちばん一般的なのが3泊4日のクラシックコースですが、1泊2日で気軽に参加できるツアーもあります。
●Classic(クラシック) スタンダード3泊4日 Km82からマチュピチュまで約45㎞
●One Day(ワンデイ) 1泊2日 Km104からマチュピチュまで約10㎞
※Km82やKm104は地点の名前で、クスコからの距離を表しています。
インカトレイルツアー会社
インカトレイルは個人で歩くことはできないので、必ずツアーに参加することになります。
日本から代理店を通しての予約や日本人ガイドがいるところもありますが、値段が高くなるのでここでは現地のツアー会社のみ紹介します。
現地ツアー会社では、ガイドは英語またはスペイン語になります。
私が利用したツアー会社はPeru Treks & Adventureです。この会社を選んだ理由は、値段が他社と比べて安めで、ホームページの説明がかなり詳しかったからです。
参考までに他の主なツアー会社とホームページに記載されている値段を書いておきます。
○Peru Treks & Adventure USD650+チップ約200ソル
○Llama Path USD699(2019)+チップ
○SAS Travel USD700(2019)+チップ
○Enigma US$785(2018)+チップ
※チップに関しては後述
これは十数人の団体ツアーに参加した場合の値段です。ツアー会社によってはプライベートツアーや小グループのツアーを催行しているところもあります。
予約はインターネットで行うことができます。(英語またはスペイン語)
宿泊はテントで
インカトレイルの特徴は、歩くことに集中できるということです。
ツアーにはポーターが含まれており、テントや物資の運搬はポーター、食事はコックが作ってくれるのでツアー客は自分の必要最低限の荷物だけを運び、ただ歩くだけでいいのです。
寝袋やマットは自分で運ばなければならないので少し荷物がかさばりますが、それもポーターを雇えば運んでもらうこともできるのでかなり楽をして登山をすることができます。
登山道自体はそれほどハードではないので、標高の高さだけがネックになります。
高山病に注意
道自体はそれほどきつくはありません。高低差は1600mとそこまで大きくはないのですが、問題は標高の高さです。スタート地点がすでに2600mあり、最高地点は4200mにもなります。
ちなみに富士山は五合目が2300m、山頂が3700mです。
なので、もっとも重要なのが高所順応しておくことです。ツアー会社では遅くとも2日前にはクスコ(3400m)に到着しておくように勧められていますが、正直たった2日で高所順応は難しいと思います。そのうえ山道を歩くので、1週間ほど事前にクスコに滞在することが望ましいです。
私のグループでも2人がおそらく高山病のため、体調不良で2日目の朝に引き返していきました。私は1ヶ月ほどかけてチリから北上しており、標高の高い地域にすでに数週間滞在していたのでとくにきつくは感じませんでした。
高山病対策に、コカの葉っぱをガイドが持っているのでそれを噛んだり、食事の時にはコカティーを飲んだりしたことも効果があったのかもしれません。
ガイド・アシスタント・コック・ポーター
私が参加したときは、参加者が15人、ガイド1人、アシスタントガイド1人、コック1人、ポーター19人でした。
ガイドとアシスタントガイドは英語を話します。参加者のうち2人が高山病のため、2日目の朝にアシスタントガイドとともに引き返してしまったので、2日目以降は参加者14人に対してガイド1人になりました。
コックは一人ですが、調理はポーターが手伝います。ポーターは常に私たちより先を進み、食事の準備やテント設営などすべてやってくれます。なので、参加者は他のことは何も気にせずに、ただ歩くだけでいいのです。
チップ
私は以下のチップを現地通貨ソルで払いました。
ガイド:15ソル アシスタント:5ソル コック:10ソル ポーター(19人):計73ソル
円に換算すると約3500円です。
チップは自由意志ですが、ほぼ強制的に払う雰囲気です。
Peru Treksの場合は相場がパンフレットに書かれていたので、それをもとにチップ慣れしているアメリカ人たちが金額を決めて支払うという感じになりました。
ちなみにその相場は
ガイドへ:15~25ソル、サブガイドへ:10~15ソル
コック:計90~100ソル
ポーター:各ポーターが45~50ソル受け取れるように
というものでした。
ガイド・サブガイドへは個人で上記の金額を各々払います。
コックとポーターへは彼らが受け取る金額なので、参加者とポーターの人数によって支払い額が変わります。なので今回のように参加者13人だった場合、コックへは100ソル÷13人=1人7.5ソルが相場となりますが、少し多めに1人10ソルずつ、合計130ソルをコックは受け取りました。
ポーターは19人だったので、50ソル×19人=950÷13人=73で、1人73ソルずつ払いました。
他のツアー会社でもホームページを見る限り、チップは自由だけど支払うのが普通だというようなことが書かれています。
参加者やポーターの人数によって前後するでしょうが、だいたいどこのツアーでも全部でUSD50~60ほどのチップが必要になると思われます。
ポーター・コックへのチップは3日目の夜に集めて渡します。
ガイド・サブガイドへのチップはマチュピチュ観光後のランチの後に個別に渡しました。
私が参加したツアーでは、参加者の2人が体調不良で2日目の朝にサブガイドとともに下山しました。彼らはオリャンタイタンボからアグアスカリエンテスまで電車で行き、マチュピチュでみんなと合流しました。
なので、他の参加者はサブガイドにはチップはあげずガイドに少し多めに渡していました。でも私は1日目とマチュピチュではサポートしてくれたので感謝の気持ちを込めて、サブガイドにも少しチップを渡しました。
日程
1日目:12㎞/4h30m
Km82~ワイヤバンバ(Wayllabamba)
2日目:12㎞/7h
ワイヤバンバ~パカイマユ(Pachaymayu)
3日目:15㎞/7h30m
パカイマユ~ウィニャイワイナ(Wiñay Wayna)
4日目:5㎞/2h
ウィニャイワイナ~マチュピチュ
ワイナピチュ・マチュピチュ山に行きたい場合
ワイナピチュやマチュピチュ山に行きたい場合は、ふもとの村であるアグアスカリエンテスに1泊して翌日に再度訪れることになります。
マチュピチュに到着した日にワイナピチュに行くことはできません。(ツアー会社によるかもしれません)
その場合、ツアー会社に帰りの電車のチケットはいらない旨を伝え、自分で翌日の電車のチケットを購入する必要があります。
ちなみに電車のチケットは当日でも空きがあれば駅の窓口で運賃の差額のみで、手数料無料で時間・日にち変更をすることができます。
私たちは宿はあらかじめネットである程度調べておき、到着してから探しました。
クスコについたら
二日前の午後7時半までにクスコのオフィスでオリエンテーションと残りのお金を支払います。
これはUSDでもソルでも両方でも可能です。
Peru Treks & Adventureの場合USD350を事前に支払い、残りUSD300を現地オフィスで支払いました。
高所順応のために遅くても2日前にはクスコに到着するように勧められています。
トイレ・シャワー
トイレは各キャンプ場や食事休憩をする場所にあります。トイレットペーパーは備え付けられていないので持参が必要です。どうしても我慢できない緊急時は茂みにかくれてすることができますが、紙を捨てないようにしましょう。
1日目、2日目のキャンプ場にはシャワーがありましたが、あまりきれいではなく、とても冷たい水しか出ません。3日目のキャンプ場には新しいシャワー室がありお湯がでるということでそこまで我慢したのですが、水しか出ず、冷たいシャワーを浴びることになりました。
持ち物
●水…2日目の朝までは途中で売店があり水を購入することができますが、割高です。2日目の夜以降は沸かした沸騰させた水が支給されるのでそれまで必要な水を持参することをお勧めします。
食事の時には飲み物も準備されているので、合計4Lほどあれば途中で水を購入する必要はないかと思います。
●おやつ…おなかがすいた時のためのおやつ
●寝袋
●寝袋マット
●着替え…最低1着はあるほうがいいです。
●タオル
●カメラ
●パスポート
●日焼け止め
●虫よけ…12月始めには虫はほとんどいませんでした。
●ウェットティッシュ…お風呂に入れないので体を拭いたり、食事前やトイレのあとに手を拭いたりできるのでとても便利です。
●お金(ソル)
服装
私は12月の始めに行きましたが、寒かったです。晴れていて歩き始めると温かくなり半袖になることもありましたが、私は寒がりなので朝、夕は毛糸の帽子・ネックウォーマー長袖インナーにTシャツ・ゴアテックスのレインコートを着ていました。手袋も必須です。
食事
食事は普通においしかったです。主食はごはんで、スープや野菜、お肉などバランスよくおなかいっぱい食べられます。アレルギーや好き嫌い、ベジタリアンの方にも対応してくれます。
食事時には飲み物も提供されます。
個人ポーター
テントなどはポーターが運んでくれますが、個人の荷物は自分で運ばなければなりません。
それも大変だという人は個人の荷物を運んでくれるポーターを雇うことができます。
6㎏/4日=USD85+チップ35~50ソル
基本的にポーターは出発前に予約が必要ですが、出発後につらくなりポーターが欲しくなった場合、2日目の朝に非公式の現地ポーターをガイドが手配してくれます。12㎏/100~120ソルで、他の人とシェアすることもできます。しかし非公式であるためいつでも手配できるとは限らず、また、運んでくれるのは2日目の朝、キャンプ場から最高地点のファーストパスまでのみになります。
レンタルの寝袋は約2.5㎏、マットは1㎏とそれだけでも3.5㎏と結構な重さになるので、体力に自信がなかったり快適に歩きたい場合はポーターを始めから雇うほうが得策です。
覚えておきたい用語・歴史
インカトレイルを歩くなら、インカ帝国にまつわる歴史を知っているほうが絶対に楽しいです。遺跡も歴史を知らなければただの廃れた建物にしか見えないかもしれません。もちろん途中でガイドが説明してくれますが、すべて英語なのであらかじめある程度予習していくほうが理解が深まります。知っておくと便利なキーワードを紹介します。
●インカ帝国…紀元1400~1500年ごろにペルー・ボリビア・エクアドルを中心に栄えた国。首都がクスコでマチュピチュはその当時造られた遺跡。
●ケチュア族…インカ帝国を築いたのがケチュア族。エクアドルからペルー・ボリビアにかけてのアンデス山地に住む民族。インカトレイルのポーターたちもケチュア族がほとんど。
●ケチュア語…ケチュア族の言語。南米の多くの国の公用語はスペイン語だが、ケチュア族にはケチュア語しか話さない者も多い。ポーターのなかにもスペイン語が分かる人はほとんどいない。
●コカ…コカの葉は高山病に効くといわれており、そのまま噛んだり、お茶に入れて飲んだりする。また、コカ入りの飴やチョコレートなどもある。ケチュア族は薬や儀式にも使用している。薬物コカインの原料だが、葉っぱを噛んだりお茶にして飲むだけでは幻覚が見えたり依存症になったりすることはない。
●ハイラム・ビンガム…1911年に公式にマチュピチュ遺跡を発見したアメリカ人。
詳しいトレッキングの様子はまた別の記事でお伝えします!
ディスカッション
コメント一覧
写真は信じられないほどです。インカトレイルルートは間違いなく最高の景色の1つであり、各キャンプに行くのは難しいことです。
乾杯 https://www.crossoverperu.org/community-projects/umachurco-inca-trail-porter-team